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開発に携わった最新のシール機で、モニターである女子高生たちと=東京・東品川のバンダイナムコ
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「女子高生の声をビジネスに」
トップアスリートを、ファンならではのアドバイスで支える強力なサポーター。ヒット商品を狙う企業にとって、例えるならばそんな存在だ。
首都圏の女子高校生を中心とする約1万人の消費者モニターを抱え、様々な企業の商品開発や改良、プロモーションに貢献してきた。NTTのキャラクター電報、資生堂の初代コンビニコスメ、バンダイナムコゲームスの15機種にも及ぶ歴代の写真シール機。いずれも、ブーム社にモニター登録する女子高生たちが消費者として発信した声を反映した商品だ。
「女子高生マーケティング」のパイオニアは、86年の創業時から一貫して女子高生の底力に着眼してきた。「流行と口コミに敏感。少ないお小遣いで楽しみたいから商品選びはシビア。大企業の幹部を相手に『絶対買わない』などとはっきり言える。最強です」
例えば、ダリヤ(名古屋)のヘアカラー剤「パルティ」。東京・渋谷にあるブーム社の小さな事務所で、ブランド力向上のため複数のパッケージデザインを持参した約10人の同社幹部を前に、女子高生たちは次々と意見を口にした。それらを反映したデザインで08年春にリニューアルした商品は、前年比1.5倍を売り上げた。
その目の確かさは、食品商社の高山(東京)消費者調査でもたびたび証明されてきた。10年ほど前のことだ。女子高生モニターたちに発売前の約50種類のお菓子を食べてもらった。女子高生たちがつけた順位と、発売後の売上げ実績の順位を比べたら、的中率はなんと98%。「衝撃でした」と担当者は振り返る。
デジタル操作で機械的な人集めをしていては、こうはいかない。企業ニーズに即した人材を迅速に集めるためには、登録モニターとの関係を温めておく必要がある。「便利なデジタル時代だからこそ、アナログの考え方が重要です。人集めは登録者から知り合いを紹介してもらい、機会があるごとに面接方式や電話による生身の接触をしています。メールだけでは、信頼関係は深まらない」
生来の勘どころがある。学生時代、故郷の山口県周南市にある中学校での教育実習で、生徒が毎日提出する「生活の記録」に夢中になった。「一行しか書かない子に『先生、こんなこと知りたい』『今日はこうだったね』と返すと、次からガーッと増えて。やがてみんなノートにびっしり書くようになって、毎日徹夜でした」
ヒット商品を生み出すため、消費者インサイト(本音)を引き出そうと多くの企業が必死の時代。長年、消費者調査を続けている森永乳業の担当者は「データではなく、消費者心理を深堀りしたいときは必ずお願いします。話し好きな子が多く、調査終了後も残っていろいろと教えてくれる。雑談の中に貴重な情報が潜んでいることも少なくありません」。
モニターたちは、かかわった商品や企業のファンになる。実際、後に森永乳業に入社した若者もいる。さまざまな業界で活躍するブーム社の卒業生たちを「若い友だち」と呼んでいる。「私は何も知らない人間ですが、情報を持つ人たちから教えてもらうことが大好きです。どんな情報通と出会えるだろうと、いつもワクワクしています」
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